[4] サプライヤマネジメント(SRM)を深掘りする

サプライヤマネジメントとは

今回のコラムでは、サプライヤマネジメントについて深掘っていきたいと思います。サプライヤマネジメントはSRM (Supplier Relationship Management) とも呼ばれ、カテゴリマネジメントの大きな柱となっています。

サプライヤマネジメントは、サプライヤとの適切なコミュニケーション粒度であると私は考えています。なぜ、サプライヤマネジメントが重要なのかと考えると、コミュニケーションの無い相手に対しては、相手の期待値が把握できないため、サプライヤは決められた手順で納品し続けることになります。

仮にサプライヤが完璧に決められた手順を遵守し続けたとしても、買い手側のビジネス環境が変化したり、経年により買い手の期待値が上昇していたとしても、サプライヤは検知することができず、次第に期待値ギャップが大きくなってしまいます。つまり、サプライヤが一定の品質基準を維持していたとしても、買い手からみたサプライヤの品質は相対的に悪化したように見えてしまいます。

そのギャップが累積して何らかのイシューとして浮彫になってしまう可能性があり、それを防止するために、両社で適切なコミュニケーションを行い、期待値調整をしていきましょうという思想がサプライヤマネジメントの肝となる考え方と私は考えております。

本コラムで紹介するサプライヤマネジメント手法は全て、「適切なコミュニケーション粒度をどう設計するか」という一つの問いに対する、具体的な答えと考えていただければ幸いです。

SRMはサプライヤセグメンテーションから始まる

前回のコラムで、サプライヤセグメンテーションと、コミュニケーション粒度の変え方の事例について簡単に触れましたので、そちらのコラムも併せてご覧ください。カテゴリオペレーション(実行)とは何か

サプライヤセグメンテーションを行うのは、自社に与えるサプライヤのインパクトに従い、重要度の高いサプライヤから順に、コミュニケーション粒度を変えていくという考え方でした。全てのサプライヤを密にコミュニケーションできることが理想ですが、限られた経営リソースで調達活動を行うため、全サプライヤと同じ粒度でコミュニケーションすることができないという前提から、重要度の高いサプライヤほど、コミュニケーション粒度を高めるという施策です。

サプライヤセグメンテーションができていなければ、イシュードリブンなサプライヤマネジメントとなってしまい、火消しに終始してしまい調達活動がままならなくなってしまいます。

では、サプライヤセグメンテーションはどのように行えばよいでしょうか?前回のコラムでは、ピラミッド型に松竹梅と区分けしていく方法を紹介しました。この場合、スペンド(調達金額)でピラミッドを作成するのが最も簡便な方法です(図1)。なぜなら、スペンド(調達金額)が最も入手しやすい指標の一つだからです。応用編として、2軸で区分けする方法もあります。横軸にスペンド(調達金額)、縦軸にビジネスインパクトを取り、右上から斜めに切ることで、右上から左下へ松竹梅と区分けすることができます(図2)。この方法を用いれば、調達額は少ないが重要な資材(医薬品であれば添加剤、食品であれば香料など)を高いセグメントに区分けすることが可能です。ただし、この方法ではビジネスインパクトを定義する必要があるため、少し複雑はアクションとなりますので、余力がある場合に試していただければと思います。

サプライヤリスク管理への応用

後のコラムでリスク管理に触れたいと思っていますが、サプライヤセグメンテーションはサプライリスク管理など様々調達活動へ応用が可能です。

リスク管理の考え方にサプライヤセグメンテーションの考え方を導入すると、例えば、梅サプライヤは入口の管理に留め、与信調査やサプライヤ行動規範(CoC: Code of Conduct)への同意などに留めます。竹サプライヤは、与信やCoCに加えて、予防的措置としてバックアップサプライヤの準備や複数社調達を必須にするなどです。松サプライヤは、梅竹の施策に加えて、更に重厚に、安全在庫の積み増しや、BCP(事業継続計画)の策定など実装レベルでの備えを行い、復旧へのリードタイムの最小化も考えるなどです。重要資材や重要サプライヤほど、リソースをかけてリスク管理するという考え方を取ることが可能です。

サプライヤガバナンス

では、サプライヤとのコミュニケーションの事例について見てみたいと思います。サプライヤとビジネスレビュー(例えば、QBR: Quarterly Business Review)を行っている企業も多いと思います。購買部門とサプライヤの営業担当でビジネスレビューを行っている企業が大半と思いますが、効果的なビジネスレビューを行うためには、関係部門(自社およびサプライヤの品質部門や製造部門など)を含めたガバナンスを組む方が効果的であると考えています。

ビジネスレビューで扱う主なトピックとしては、パフォーマンスレビュー(パフォーマンス実績の予実管理)、今後の需要供給バランスの把握が定番トピックと思います。ガバナンス体制でビジネスレビューを行うと、関係部門が出席しているので、持ち帰ることなくその場で議論し、方向性を出すことができ、スピーディーな意思決定が可能であることと、直接顧客やサプライヤの現場の声(一次情報)が聞けるため、その臨場感から、メンバーの当事者意識醸成が図れるというメリットがあると考えます。

さらに、私が海外で仕事をしていた時、現地のコンサルタントからある考え方を教えてもらいました。それは、ビジネスレビューを2階層化する考え方です。つまり、通常のビジネスレビュー(QBR)を「オペレーションコミッティ」として、自社とサプライヤの現場のトップレベルでのコミュニケーションの場とします。オペレーションコミッティでは、通常のビジネスレビューと同様に、パフォーマンスレビューや需給バランスについて四半期レベルで話し合います。それに加えて、「エグゼクティブコミッティ」をオントップで設置します。こちらは両社の経営層が出席します。年1回レベルです。自社の進む将来的な方向性をサプライヤに共有し、サプライヤへサービスの拡充を促し、期待値のすり合わせを行ったり、オペレーションコミッティからエスカレーションされた課題に対処したりします。

オペレーションコミッティも、エグゼクティブコミッティも、いわゆるサプライヤを育てる場として重要なコミュニケーションチャネルですが、オペレーションコミッティはその名の通り、現場のオペレーション改善を通してサプライヤを育てていき、エグゼクティブコミッティは、経営レベルでサプライヤを育てる場となります。反対に、このようなコミュニケーションチャネルを通して、サプライヤから見た自社の状況のフィードバックを受けたり、他社事例の紹介を受けたりすることができるため、自社の客観的評価を得て自社の改善や強化の材料集めにも活用できます。

「オペレーションコミッティ」であれ、「エグゼクティブコミッティ」であれ、調達担当者(カテゴリマネジャー)は、コミッティのファシリテーションを担当します。出席者がそれなりの職位であるため、議題は細かすぎては出席者の理解が追いつかず、議論が深まらなく、逆に抽象的過ぎると、通り一遍の議論となって、こちらも議論が深まりません。ただのお見合いに終わらせず、有意義な交流とするために、調達担当者(カテゴリマネジャー)は、ハイレベルであるが具体的なアジェンダ構成を組み、ファシリテーションする能力が求められます。

このようにサプライヤガバナンスは、サプライヤとのコミュニケーション粒度を高める良い施策ではありますが、莫大なリソースがかかるため、事実上、松サプライヤにしか適応できません。しかし、サプライヤガバナンス(2階層コミッティ)は、私が過去に在籍していた企業でも導入していましたし、コンサルタントとして私がご支援した企業いくつかでこの手法が既に取り入れられていましたので、徐々にスタンダードな考え方になりつつあるのかなと思います。

おわりに

サプライヤマネジメントは、泥臭く、ある程度リソースを必要とする施策ですが、サプライヤマネジメントを実施することで、確実にサプライヤとのコミュニケーションが活性化され、成果を生みやすい施策です。個人のように、法人では「阿吽の呼吸」は通用しませんので、意識的に戦略的にコミュニケーションを高めていくことが重要です。このようなコミュニケーションを助けるツールとして、サプライヤ評価があります。次回のコラムでサプライヤ評価について記述したいと思います。

サプライヤマネジメントや、サプライヤとのコミュニケーション確立に課題をお持ちでしたら、是非、当社までご相談いただけますと幸いです。

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