[5] サプライヤ評価の設計・運用について

サプライヤ評価の設計

前回のコラムで、サプライヤガバナンスについて記載させていただき、「オペレーションコミッティ」などのビジネスレビューでのメイントピックとして、パフォーマンスレビューを挙げさせていただきました。サプライヤガバナンスについてはそちらをご覧ください。サプライヤマネジメント(SRM)を深掘りする

サプライヤ評価は、サプライヤのパフォーマンスを定量的に捉えるためだけでなく、サプライヤとのコミュニケーションのネタとして活用したり、更なる品質向上やサービス向上を促すツールと、私は位置づけています。サプライヤ評価をするものの、サプライヤへ開示せずに自社内に蓄積されている例もありますが、とても有益なアセットであるので、私は是非サプライヤに開示して欲しいと思っています。サプライヤとしても改善点の把握にもなり、またお褒めの言葉があれば、現場担当者のモチベーションアップにもつながるからです。

ただ、サプライヤ評価をサプライヤに開示する場合は、緻密な設計、客観的な評価、目的と実施方法の丁寧な説明の3点セットが欠かせないと考えています。コミュニケーションツールであるがゆえに、認識齟齬があったり、一方的な通知となってしまうと、せっかくのコミュニケーションツールが逆効果となってしまいかねないからです。

ビジネスレビューで、パフォーマンスレビューを行う際に、議論の元となるのがサプライヤ評価シート(スコアカード)です。サプライヤ評価シートは、顧客とサプライヤが使いやすいように設計すればよく、決まった形式があるわけではありません。調達関係のシステムなどには、SRMツールとしてテンプレートが既に組み込まれているものもありますので、そのような既成ツールを利用されても良いかもしれません。私の場合は、サプライヤとの特殊な関係から、オーナーメイドサプライヤ評価を組み立てることが多かったため、既成品ではなく、自社で評価シートを設計しておりました。

サプライヤ評価の元となるパフォーマンスデータを取得・測定することになるのですが、データの取得には2種類あり、①いわゆるERPなどのシステムから取得できるもの(納期遵守率や品質適合率など)と、②担当者からヒアリングベースで取得するもの、があります。前者①は既に客観データなので問題なくサプライヤ評価に使用できます。一方、後者②は主観が混在してしまうため、なるべく誰が評価しても差が出ないようなアンケート設計を行う必要があります。このような場合、5段階評価方法を用いてサプライヤ評価を行っていました。個々の評価項目を対象に、下記の5段階で評価します。

  • 5 – Extremely Exceed:期待値を大きく上回る
  • 4 – Exceed:期待値を上回る
  • 3 – Meet Expectation:期待値通り
  • 2 – Under:期待値を下回る
  • 1 – Extremely Under:期待値を大きく下回る

「3」を標準点として、問題なければ担当者に「3」をつけていただきます。「3」を基準に期待値を上回れば、「5」「4」をスコアします。期待値を下回れば「2」「1」をスコアします。人間の心理として「5」「1」はめったなことがなければスコアする動機は生まれないので、「5」「1」はほぼ使いません。実質「4」「3」「2」を使うわけですが、「3」は基準ですので「3」の場合はスコアリングだけでよいとし、「4」「2」をスコアする場合は、なぜ期待値を上回ったのか又は下回ったのかという理由をコメント欄に記載必須としました。これも人間の心理として、自分のリソース(時間)をかけて評価シートを記載しているわけですので、サプライヤに対して、よっぽどの「感謝の気持ち」や「改善要望」がなければ、コメント付きで「4」「2」をスコアする気持ちにはなれません。これによって「3」以外の数字の信憑性を高め、データとしての可用性を高める設計をしておりました。(もちろん最終化する際には、担当者間で評価粒度が異ならないように、一定のキャリブレーションは行います)

その他、減点法により客観性を与える方法もあります。例えば、「営業マンのレスポンス速度」を評価項目とした場合、初期値として「5」点を付け、評価期間内に「3営業日を超えることが1回あった:-1点」、「3営業日を超えることが2回あった:-2点」のように、閾値を割るごとに減点していくことで客観性を高めることができます。この場合、サプライヤ側でも根拠データを収集することができるため、認識相違を排除することができ、自社とサプライヤ間で共通の目線に立って改善の議論をしていくことができるというメリットがあります。

次の論点は、評価項目をどう作成するかですが、思い付きを羅列しては網羅性が担保できませんので、フレームワークを用います。調達・購買の領域でよく使うフレームワークはQCDですが、私は、もう一段ブレイクダウンされたRAQSCIモデルを好んで利用しています。RAQSCIは6つのフレームの頭文字を取って、RAQSCIとされ、Rから順に重要度が高いフレームを重要度順に並べられています。

  • R – Regulatory:法的・レギュレーション的に順守すべきもの
  • A – Assurance of Supply:安定調達(QCDのD)
  • Q – Quality:品質(QCDのQ)
  • S – Service:サービスレベル
  • C – Cost:コスト(QCDのC)
  • I – Innovation:イノベーション、VA/VE提案など

このフレーム毎に評価したい項目を更に分解します。例えば「Service」であれば、「営業部隊のサービスレベル」「カスタマーサービスのサービスレベル」…、などサプライヤの部署ごとでMECEとなるように区切ってみます。更に「営業部隊のサービスレベル」を分解し、担当営業マンの「レスポンス速度」「訪問頻度」「提案書のレベル」など、アクティビティベースに落とし込んでいきます。このような方法で、評価項目を策定しておりました。

サプライヤ評価の運用

上記のように設計したサプライヤ評価シート(スコアカード)は、運用しなければ絵に描いた餅となってしまいますので、例えば、四半期毎などで評価していきます。1年単位で評価する企業もあるかと思いますが、私は特に、前コラムで定義した「松」「竹」サプライヤについては、四半期毎がよいと考えています。理由は明確で、記憶が新しいうちに評価しなければ忘れてしまうということと、サプライヤからしても、そんな昔のことを今フィードバックされても、ということになってしまうためです。(「松」「竹」「梅」の定義は、以前のコラムをご覧ください。カテゴリオペレーション(実行)とは何か, サプライヤマネジメント(SRM)を深掘りする)

また、私は、1回1回のスコアのスナップショットよりも、経時変化の観察を重要視していますので、データの取得頻度は高いに越したことはないと思っております。傾向を観察することにより、サプライヤ評価結果を「ビジネスレビュー」のアジェンダとしてふさわしくなります。その時点でのワンイシューの議論よりも、今後に向けた舵取りをする場がビジネスレビューなので、傾向が把握できた方が議論が深まるからです。

私は、主にサプライヤ評価をビジネスレビューのアジェンダとすることで、両社の理解促進と品質向上に寄与する考え方で運用してきましたが、企業によっては、サプライヤ評価結果と調達価格やインセンティブと連動させたり、年次入札時に発注比率コントロールに適用する事例もございます。

サプライヤ評価の応用

私が提唱している応用的なサプライヤ評価について触れたいと思います。この手法を提唱している方をあまりお見かけしないので、スタンダードな手法ではないということは、予め申し添えさせていただきます。

通常のサプライヤ評価に加えて、同じスコアカードを用いて、サプライヤに発注者の立場に立って、サプライヤ自身のパフォーマンスを評価してもらう手法です。(よく、両社お互いに評価し合う双方向評価と勘違いされるのですが、あくまでも評価するのはサプライヤのパフォーマンスです)

この方法を用いると、(A) 発注者が評価したサプライヤ評価と、(B) サプライヤが自己評価したサプライヤ評価、の2種類のスコアカードが発生します。この2種類のスコアカードを比較評価します。

評価項目ごとのスコアを簡便化するため、

  • 「5」「4」を「高」
  • 「3」を「中」
  • 「2」「1」を「低」

の「高中低」3段階にセグメントしなおし、イシューマトリックスとして評価します(図1)。

  1. まず、発注者またはサプライヤのどちらかが「低」のスコアを付けたものはサービスレベルの期待値を下回っているので、レッドカードとして即その課題に対処します。
  2. 次に、「高」「中」評価のうち、発注者とサプライヤが同じ評価をつけたもの「高-高」「中-中」は、両社で認識が合っているので、問題ないとしてグリーンカードを付け、アクション不要とします。
  3. 最後に、発注者とサプライヤとで「高」「中」の評価が分かれたもの、つまり「高-中」「中-高」は、直近では良いスコアなので問題はないのですが、期待値がずれている可能性があり、将来的なイシューになる可能性があるため、イエローカードとし、急ぎではないが、次の評価時までに両社で期待値をすり合わせておくアクションを取ります。

このように、サプライヤ評価を応用すれば、過去・現在のイシューへの対処に留まらず、将来的なイシューの芽を早めに検知し、予防的に対処しておくことが可能になります。ただし、このような重厚なサプライヤ評価は、管理リソースが必要となるため、事実上、「松」サプライヤのような重要サプライヤにしか適用できないと考えます。

おわりに

サプライヤ評価は、発注者とサプライヤ間で客観的事実に基づくコミュニケーションツールとして非常に有用であり、サプライヤ評価を応用することで、様々なイシューマネジメントが可能となります。

サプライヤ評価の設計、運用に課題をお持ちでしたら、是非、当社までご相談いただけますと幸いです。

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