カテゴリオペレーション(実行)とは何か

はじめに

第2話では、カテゴリマネジメントは「カテゴリ戦略」と「カテゴリオペレーション(実行)」の2つから成り立つとお伝えし、主に戦略の部分を取り上げました。今回は、その戦略を実行に移す「カテゴリオペレーション」について書きたいと思います。

カテゴリ戦略の策定が終わったら、カテゴリ戦略に沿ったオペレーションの実行を行います。カテゴリ戦略は、カテゴリの特性により異なる戦略を取ることになるとお伝えしましたが、それは実行段階においても同様です。このコラムでは、戦略そのものには触れず、あくまで実行のバリエーション、つまり打ち手のオプションについて記載していきます。

カテゴリの性質によって、実行は変わる

例えば、設備調達や、IT調達(システム導入)などのワンタイムプロジェクトから成り立つカテゴリは、一つ一つのプロジェクト規模が大きいため、都度のRFP(Request for Proposal)となります。プロジェクトの規模が大きい分、コストの算定がぶれやすいと考えられます。つまり、サプライヤが提供するものは人月サービスですので、プロジェクトが遅延するとそのままコストとして跳ね返ってきます。しかし、調達部門はそれぞれのサービスの専門家ではないため、サプライヤ見積の実効性評価は社内のステークホルダを巻き込んでいく必要があります。調達部門としては、Hiddenコストや、ランニングコスト、保守コストなど、導入以外のコスト評価を行い、TCO(Total Cost of Ownership)ベースでサプライヤ比較できるようにする、また、プロジェクトリスクを勘案して、どれくらいのコスト上振れリスクがあるかなどを評価することに注力するのがよいと考えています。選定後の予実管理に注力し、追加コストを抑えるように啓蒙しつつ、追加コストが発生した場合いち早く感知し、マネジメントへ報告することが必要です。このカテゴリで重要なのは、TCOベースで考え、サプライヤの見積が魅力的に見えても、結局トータルコストで高くついたとなることを防ぐことであると考えます。

その他の事例としては、携帯電話、PC、社用車、SaaSなど、ボリュームディスカウントや法人価格の適用はあるものの定価が決まっており、かつ、導入後継続して使うアイテムやサービスなどです。このカテゴリは、導入時のRFPはもちろん重要ですが、経年でアカウント数を適切に管理し、使用率を把握していくことが重要なカテゴリとなります。自社で使用率を把握するだけでなく、サプライヤから使用実績を集計してもらい、使われていないアカウントの解約や、使用率の低いアカウントの代替サービスへの誘導などを行う必要があります。また、交渉手段としては、例えば季節変動のあるビジネスなどでは、夏場だけ携帯電話を大量に準備する必要がある場合などを想定すると、ピーク時だけ契約・解約を繰り返すのか、通年契約しながら全体的な利用料の低減を交渉した方がいいのかなど、利用シーンを複数想定してシミュレーションをすることが効果的と考えています。

その他間接購買のオペレーション

上記のように、サービスとサプライヤが結びついているカテゴリでは、サプライヤが特定されているため、カテゴリマネジメントとしては、分かりやすいカテゴリと言えます。

しかし、その他多くの間接購買の場合は、自社の広範囲の部門(ステークホルダ)が関与し、かつ、サプライヤも複数存在する場合があります。例えば、印刷物(パンフレットやPOP類など)が典型的なカテゴリだと思います。このような場合、一般的に用いられている方法としては、①カテゴリ戦略にて選定したサプライヤをプリファードサプライヤとして、プリファードサプライヤにボリュームを集約する方法と、②調達規定で閾値(xx万円)を設け、閾値以上の案件は調達部門とアラインを行う規定にするという方法です。

①の場合の例としては、プリファードサプライヤとはレイトカード(価格表)を合意しておき、プリファードサプライヤへはレイトカードベースで発注します。プリファードサプライヤ以外へ発注したい場合は、レイトカードがなく価格交渉が必要となるとしたり、社内的に逸脱処理の決裁が必要となるよいうようなルールを設定しておけば、プリファードサプライヤへ発注した方が迅速(事務作業工数が少ない)なため、自然とプリファードサプライヤへボリュームが集まる構造にすることが出来ます。個々の発注に対する交渉は必要なく、集約されたボリュームベースで、年度単位などでバルク交渉が可能なため、調達部門としても工数の節約となります。

②の場合は、閾値以下の調達に関しては事業部内で決裁して良いとし、閾値以上では調達部門のルールに従ってプリファードサプライヤへ発注することにすることで、ガバナンスを効かせることができます。この場合、閾値の設計が非常に重要になるわけですが、調達部門としてはあくまでもトータルスペンドの8割をカバーする取引をマネジメントできればいいので、8割をカバーする取引がxx万円以上の取引であることを逆算して設計すればよいと考えます。

直接材のオペレーション

直接材の場合は、選定されたサプライヤとのリピート業務が中心になります。納期、搬入、数量変更(契約変更)などのデイリーオペレーションと、品質不良などによる逸脱処理、返品処理などの臨時業務、サプライヤの工場査察などの管理業務を回していくことになります。

直接材(特に原料や1次包材)のサプライヤは、変更コストと変更リスクが非常に高いため、一度選定されたサプライヤが終売や大きな品質異常を起こさない限り、製品ライフサイクルの最後まで同じサプライヤから調達することは珍しくありません。いわゆる4M変更(Man・Machine・Material・Methodの変更を指す、品質管理上の用語)です。

従って、新製品導入時に十分吟味してサプライヤを選定する必要があります。しかし、問題は、上市前の製品開発は時間勝負であるため、サプライヤ選定に十分時間をかけることが出来ない事例も存在することです。社内ステークホルダに対して、選定期間を考慮した開発スケジュールを啓蒙するとともに、調達部門としては、候補サプライヤのショートリストを常に最新化し、迅速な選定が可能な状態にしておくことが望ましいと考えます。

私が製薬会社でカテゴリマネジャーを行っていた際の実例を挙げます。製造委託サプライヤ(CMO)の営業担当者が営業訪問される際に、各社が対応できる技術やサービス(人的要因や設備要因、ノウハウなどで対応できる技術やサービスが異なります)を、ディスカッションの中でさりげなくヒアリングし、サプライヤリストに対応可能技術やサービスを星取表の形式でまとめ、都度更新していました。これにより、いざ選定が必要となった場合に、客観的データに基づき、ビジネスの要求事項に対する対応可能候補サプライヤのショートリストが一瞬で作成でき、サプライヤ探索の工数が削減できるため、すぐにRFPの実施に移行できます。また、ベースリサーチができているので、ミスマッチが起こりにくく、RFPの辞退者が少なくて済むというメリットもありました。

上市後は、サプライヤ変更は難易度が高いため、既存サプライヤとの協働関係を構築し、協力してコストリダクションを行うことが必要となります(後述のSRMを参照)。コストリダクションには、①調達品のスペックを見直し、簡素化する、②サプライヤの製造プロセスを見直し、余分な工程を削減する、③買い手が精度の高いフォーキャストや確定発注を早めに出すことで、サプライヤ側の生産平準化を行う、ことなどが代表的な打ち手となります。

SRM(サプライヤマネジメント)

ここまで、カテゴリの特性ごとに異なる実行のパターンを見てきましたが、どのカテゴリでも共通して必要になるものがあります。サプライヤマネジメントです。SRM(Supplier Relationship Management)とも呼ばれます。

SRMの肝は、サプライヤ数をマネジメント可能な数まで削減することです。しかし、取引が継続している以上、簡単にサプライヤ数を削減することは困難です。そこで登場するのがサプライヤセグメンテーションという考え方です。サプライヤセグメンテーションとは、取引の重要性でサプライヤを分類(セグメンテーション)し、マネジメントの粒度を変えていくという手法です。例えば、取引の重要性に応じてサプライヤを松竹梅で分類し、松竹梅で行うマネジメントアクティビティを重厚なものからライトなもの変更していきます。例えば、下記です。

  • 松サプライヤ:会社代表級のトップマネジメント、QBR(四半期ビジネスレビュー)、サプライヤ評価、調達BCP(事業継続計画)策定
  • 竹サプライヤ:事業部長級のトップマネジメント、年1回のBR(ビジネスレビュー)、サプライヤ評価
  • 梅サプライヤ:担当者級のミドルマネジメント、サプライヤ評価、オンデマンド対応

では、松竹梅でどれくらいのサプライヤ数が適切かですが、私の場合、パレートの法則でを適用し、妥当な数字の目安を作成しておりました(図1)。

例えば、300社のサプライヤと取引があると仮定すると、

  • 300社のうち、2割(60社)をSRM管理内サプライヤとし、8割(240社)をSRM管理対象外とする
  • SRM管理内60社のうち、2割(12社)を松竹サプライヤとし、8割(48社)を梅サプライヤとする
  • 松竹12社のうち、2割(2社)を松サプライヤとし、8割(10社)を竹サプライヤとする

以上は、あくまでも目安のため、自社のリソースに応じて調整する必要があります。

では、サプライヤセグメンテーションを判断する方法ですが、単純にスペンドで松竹梅を決定していく方法と、スペンド×ビジネスインパクトの混合で松竹梅を決定していく方法があると考えています。

いずれにしても、経営資源は有限であるため、すべてのサプライヤに同じ密度で向き合うことはできません。松には、供給が止まった場合の事業インパクトが大きいサプライヤが入るため、BCPの確認まで含めた手厚い管理を行い、竹は年1回の定点観測で関係性を維持し、梅はライトな管理に留めるという濃淡をつけて管理していくことが現実的なサプライヤマネジメントと考えます。

おわりに

ここまで、カテゴリオペレーション、サプライヤマネジメントと見てきましたが、実際のオペレーションは、調達している製品/サービスが置かれている状況や、個別の状況に依存するため、個々に検討していく必要があります。カテゴリマネジメント・サプライヤマネジメントについて、お悩みがございましたら、当社までご相談いただけますと幸いです。

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