「カテゴリ」とは何か
調達担当者・購買担当者であれば必ず耳にする「カテゴリ」あるいは「カテゴリマネジメント」ですが、「カテゴリマネジメントとは何か」を明確に解説するサイトや資料は、実はあまり存在しない。海外のサイトでも同じである。その多くが「カテゴリ」を理解している前提で、カテゴリマネジメントの方法論つまり「分析→戦略策定→施策実行→レビュー」というPDCAサイクルについて解説しています。私は、調達業務を始めたばかりの頃、そもそもカテゴリについて理解したく、このようなサイトを見ては、「おいおい、その「カテゴリ」って何なのかが知りたいんだよ」という突っ込みを入れていました。
このコラムでは、私なりに考えた「カテゴリ」および「カテゴリマネジメント」についてご紹介したい。(定義についてあまり明確に書かれたものがないということは、10人いれば10通りの定義があっても良いということですので、このコラムを参考に読者の皆様(おそらく調達やサプライチェーンを担当されている皆様)の定義策定の一助となればという思いから、このコラムを執筆しました)
カテゴリの定義
カテゴリとは、買い手が「同一マーケットとみなせる、あるいは、みなしたい」と判断するサイズで区切られた、分析・戦略立案が可能な調達購買製品群のことと定義したい。この一文だけでは「なんのこっちゃ」となると思いますので、説明してまいります。
カテゴリは買い手の管理単位と考えております。ですから、買い手都合で設定して構いません。つまり、カテゴリが最初から存在する固定的な実体ではなく、買い手の都合に合わせて設計が可能ということです。例えば、IT調達の例を考えてみます。IT機器というカテゴリを設定した場合、PC、スマホ、周辺機器をIT機器カテゴリ分類することができます。一方、更に粒度を細かくし、PCというカテゴリを設定し、ノートPC、デスクトップPC、2-in-1PCなどを分類することができます。モニタをデスクトップPCと一体で管理するのか、切り離して周辺機器として管理するのか、迷うこともあると思います。重要なのは設定したカテゴリ内でのサプライマーケットの状況です。そのカテゴリ内に分類される調達品/サービスを供給するサプライヤ(プレーヤー)が、同一マーケットとして競合状態になっているかを確認します。例えば、業務用スマホを調達しているとすれば、サプライヤは通信キャリアなので、競合状態となっています。一方、業務用PCを調達しているとすれば、ハードウェアと同時に「初期設定(キッティング)・ヘルプデスク役務」も検討する必要があります。PCサプライヤの付帯サービスとして、同一カテゴリとして設計するか、ハードウェアと役務を分けて別々のカテゴリとして設計するか、という問題が発生します。
- 同一マーケットとみなせるか(客観):供給側のサプライヤ構造・市場構造として、同一マーケットとして分析できるか(競合状態にあるか)
- 同一マーケットとみなしたいか(主観):需要側(買い手)が、どのようなマーケットで戦略を組みたいか(どういう買い方をしたいか)
では、どのようなサイズ感が効果的なのかを見ていこうと思います。
粗すぎても、細かすぎてもいけない
カテゴリは、管理できるサイズ感で設計する必要があります。今度は直接材の事例を見てみたいと思います。私が以前担当していた医薬品の包装材の事例です。タブレット(固形剤つまり錠剤)包装の場合、1次包装と呼ばれるPTPシート(Press Through Package)の原料であるアルミシートやPVCシート(Polyvinyl Chloride)と、2次包装と呼ばれる包装材である個装箱や添付文書に分かれます。私が所属していた組織では、包装材種別単位(アルミシート、PVCシート、個装箱、添付文書)をカテゴリの管理単位としていました。これよりも管理単位を粗くする(1次包装と2次包装というカテゴリ分けなど)こともできますが、サプライマーケットがあやふやになり、どのサプライヤとどのサプライヤが競合であるのかがわかりづらくなるため、カテゴリとして管理しにくくなります。
一方、管理単位を細かくするとどうなるか考えてみます。例えば、前出の個装箱について、素材(紙質)単位や、ニス加工の有無、偽造防止加工の有無など、機能単位でカテゴリを細分化することは可能です。しかし、細分化すればするほど、対応できるサプライヤ数に制限がかかり、サプライマーケットが見かけ上、寡占状態(場合によっては独占状態)となってしまい、調達戦略の策定が難しくなってしまいます。
ここで、疑問が出てくる方がいらっしゃるかもしれません。アルミシートとPVCシートの両方を供給できるサプライヤが存在するのでは?あるいは、1次包装と2次包装の両方に対応できるサプライヤが存在するのでは?その場合、カテゴリが粗い方がいいのでは?という疑問です。
サプライヤがクロスセルできる場合は、カテゴリの設計を粗くするのではなく、カテゴリ戦略の策定という次のフェーズで、クロスカテゴリサプライヤとして、カテゴリ戦略に組み込みます。そもそも包装材の供給だけでなく、包装行為そのものを製造委託として請けることができる製造委託事業者も存在し、製造委託事業者をどのようにカテゴリ戦略に組み込むかも同じ思想です。クロスカテゴリサプライヤのレバレッジ力を利用するのか、リスク管理として分離するかは、カテゴリ戦略の一環として考える必要があります。
医薬品包装材(直接材)を事例に考察しましたが、ほとんどのカテゴリについても同様の考え方が可能と考えます。
カテゴリ区分は動かさない前提で設計する
決定したカテゴリ区分を用いて次のフェーズでカテゴリ戦略を策定します。カテゴリの設計は、買い手の管理したい区分によって設計してよいと申し上げましたが、カテゴリ戦略は一般的に向こう3~5年を見据えて戦略を立てるものとされていますので、一度定めたカテゴリ分類は中長期の戦略サイクルの単位として固定し、頻繁な変更をすることは実質的にできないと考えています。
カテゴリ設計は組織設計でもある
カテゴリ設計は組織設計と密接に関わるので、その観点を補足し、このコラムを閉めたいと思います。
組織間で生じるカテゴリ分類のギャップ
購買部門が存在せず、事業部ごとに個別に購買を行っている場合、カテゴリの分類方法が事業部間で整合が取れていない可能性が生じます。
たとえば、前出のPCに付帯する「初期設定(キッティング)・ヘルプデスク役務」を考えます。A事業部ではPCの付帯サービスとしてPCカテゴリで管理しているとします。一方、B事業部ではPCカテゴリと切り離し役務のカテゴリとして管理しているとします。そのような場合、同じ製品/サービスであっても購入対象サプライヤが異なったり、購買担当者の戦略優先順位が異なったりすることがあるため、A事業部とB事業部で共同戦略が取りづらいということが発生します。マネジメント層から「同じ製品を購入しているのに、なぜ共同購買ができないのか」と指摘を受けるケースは多々耳にしますが、異なるカテゴリとして管理しているということは、同一マーケットとみなしていないということなので、共同戦略が取りづらいということが発生してしまうと考えられます。
購買担当者間の評価指標のギャップ
購買部門が組織として存在し、集中購買化が実現していたとしても、購買部門内の担当者不均衡の問題が発生します。購買部門はジョブ型で設計されている企業が多いと思いますが、担当者に割り振られるカテゴリの調達額(スペンド)規模、複雑性(コストセービングの出しやすさ)、管理するサプライヤ数、には差があり、この差がそのまま表面的な成果の差として表れてしまう。例えば、ITカテゴリの購買担当者は、システム導入などの大規模プロジェクトが発生すると、大きな投資が生まれるため、コストセービングなどの余地が生まれやすく、プロジェクトを推進するサプライヤと1対1で交渉していくことになります。一方、オフィスサプライなどの汎用品のカテゴリを扱う購買担当者の戦略は、1対1交渉ではなく、多品種のものをカタログ化などで、購買しやすくするための集約化が主な戦略となります。従って、両者においては、全く異なる動き、異なる成果をどのようにキャリブレーションするのかというKPI・評価制度の設計につながります。
以上の考察が、調達購買担当者、サプライチェーン担当者の皆様の戦略策定の一助になれば幸いです。

